セミナー「ふくしまの農と人とつながる講演会」報告(寄付先団体 共催)
端数倶楽部の寄付先団体である『かながわ「福島応援」プロジェクト』(kfop:ケフォップ)様と端数倶楽部との共催で、1/20(土)@横浜にてセミナーを開催いたしました。
開催: 2018 年1 月20 日(土)14:00~16:30
会場: 八洲学園大学 7 階 7A 教室
タイトル : 「ふくしまの農と人とつながる講演会」
~福島でチャレンジする若手農業者のこれまでとこれから。
その自信と魅力はどのように生まれたのか。
困難のなかで見いだした、対話とつながり。~
登壇者: 菅野瑞穂さん(きぼうのたねカンパニー株式会社代表取締役)
廣野晶彦さん(あぶくまカットフラワーグループ、花卉栽培農家)
共催: かながわ「福島応援」プロジェクト(kfop)
富士ゼロックス株式会社端数倶楽部
■講演内容
(第一部) 菅野瑞穂さん
福島復興の農業再生のモデルとなった東和地区の取り組みと
リピーターを生み地域に人を呼び込むツアーづくり
二本松市東和地区。30 年前に地区全体で循環型の有機農業を目指した。2011 年、震災後に「福島農業再生モデル地区」となり、除染、全品・全袋検査を実施。
農業という価値をビジネス化し、都市と地域をつなぐ、生産者と消費者をつなぐことを目指した。原発事故により、作付けが可能か、ここで農業をやっていいのかずっと悩んできた。
新潟大学などの協力で放射線量の見える化や除染を進めた。2013 年以降、基準値を超えるものは検出されていない。
目に見えない分断、震災直後、学校給食や家庭の食事で食材を分けるなど変わってしまった。
2013 年、継続的な事業として福島の経験や想いを伝えるために「きぼうのたねカンパニー」を設立。理念は、「たねをまくことは、命をつなぐこと」、「人の心に希望の種をまき、未来の自分を想像する社会」。
旅行会社H.I.S.との連携で、5 年間で7 回の米作りツアー、農家民宿遊雲の里をオープンし農業体験教育、農産物のインターネット販売やマルシェで対面販売を実施。
福島のマイナスイメージの壁を乗り越えること。人に来てもらう、肌で感じてもらうこと。持続性と地域社会の自立。地域の人を最大限に生かすこと。就労の場、移住してくれること。子どもの姿が見られる、昔ながらの原風景を取り戻すこと。を大事にしている。
(第二部) 菅野瑞穂さん 廣野晶彦さん トークセッション
地域の枠を越えた若手農業者の連携と その先に見えるあぶくま地域の農業
東和地区の隣接、川俣町山木屋地区。空間放射線量が高いため2011 年4 月に計画的避難指示区域に指定、2017 年3 月31 日に避難指示が解除された。山木屋地区の獅子舞が7 年ぶりに再開された。
廣野さんは実家の家業のトルコキキョウ栽培を継ぐため2008 年から研修という形で東京板橋の花卉市場に勤務。2011 年の研修終了時は川俣町に帰れず勤務を継続、2015 年に川俣町に戻り、山木屋地区で花卉栽培を始めた。
花卉は食べものではないため、震災直後を除けば風評被害はほとんどなく、逆に応援してくれる人も多かった。大阪大学、広島大学のリーダー育成プログラムなどの協力で、研究者やボランティアなど地区外の人々との交流、勉強会もおこなった。長期間、人が不在で農地は荒れ、草刈りや水路掃除が必要だが、帰還者には高齢者が多く作業が進まない。地域住民で共同でやってきたことを今後どうするかが課題。
≪セッション≫
- 若い世代がいないので将来的に不安はあるが、やるしかない。
- 米の再開、食べるものを作ることは風評被害との戦。基準値を超えるものは出ていないという事実。放射性物質は胚芽に吸着するため、精米すると危険な部分は取り除かれ、より安全になる。
- 過疎化はこの地区だけの問題でなく全国的な問題。重要なことは将来を支える子どもがいないこと。子どもがいる世帯が戻る決断をした人はすごい度胸だと思った(思ったよりも多い)。
子どもだけではなく大人も、地域に人に住んでいるかが重要。 - 帰ることを迷っている人がいる。どの地域も若手が少ないなかで、地域の課題から事業をつくることを目指す人がいる。自分の姿を見た誰かが次の動きにつなげてくれるとうれしいと話していた。一度避難してからまた戻る選択をするかどうか、まだ迷っている方もいるが、だんだん白黒はっきりしてくると思う。
- 今後、地域の課題を共有して地域を超えたつながりを持つことが課題。
- 住んでいる自分たちだけでなんとかしようとすると限界がある。地区を知ってもらう、自分たちが見えない視点で見てもらうというのが大事だと思う。そういうところからいろんなつながりができて発展していくのではないか。大阪大学の参加から新たなアイデアにつながったことなどもあるので、これからも積極的に地区外の方と交流する場を大切にしていきたい。
■講演概要
参加者: 53 人(うち登壇者・スタッフ20 人、一般33 人)
端数関係(OB込み):7名
■端数倶楽部 参加者感想
(参加のきっかけ)
- 福島の復興に対して何かしたいと思ったこと
- 福島の実情を生で聞きたかったから
- 「FUKUSHIMAいのちの水」活動の参加がきっかけで、輪が広がればいいなと思ったから
(内容について)
- 福島の農業に従事しておられる皆さんの「現況」を知ることができた。広域につながりを持って、いろいろな取り組みをしている元気な方たちと交流できて、逆に「元気」をいただいた。厳しい状況の中で、自らもこれからどう生きていくのかを考えさせられた。
- 有機農業&農家民宿を含めて一次産業から六次産業化が進んでいることが実感できた
- 若い人たちが福島で頑張って新しいビジネスを切り開いていることがわかって、とてもうれしかった。
(このセミナーをきっかけに何か行動したいと思ったか)
- 福島出身の仲間が多く、定期的に福島に出かけているが、これからは福島の農につながる何かができたらと、目的を持って出かけたい。農家民宿にはぜひ宿泊したいし、体験したいと感じた。
- 懇親会で講演者と話ができ、頑張っていることを実感できた。さらに農家民宿を含めて体験したいと思った。